今回のレジンテーブルオーダーについて
神戸・トアロードにオープンするサロン様からのご依頼背景
今回制作しているのは、直径50cmのラウンド型レジンテーブルです。
神戸市中央区・トアロードに新しくオープン予定のウェルネスビューティーサロン様より、「空間に海を感じさせるテーブルを置きたい」というご相談をいただいたことがきっかけでした。
美容やウェルネスの空間において、家具は単なる備品ではなく、空間の印象や記憶を左右する重要な存在です。特に受付やカウンセリングスペースに置かれるテーブルは、お客様が最初に視界に入れるアイテムのひとつ。
そのため「既製品ではなく、ここにしかない一台を」という明確なオーダー意図がありました。
店名が“海”を連想させることから、テーマは自然と「海」に決定。ただ青いレジンを流すのではなく、入江・砂浜・沖合・波といった情景まで表現するレジンテーブルを目指すことになりました。
直径50cmラウンドテーブルというサイズと意味
直径50cmというサイズは、一見コンパクトですが、ラウンドテーブルとしては非常にバランスの良い寸法です。
円形は角がなく、人の動線や視線を柔らかく受け止める形状で、ウェルネスサロンや美容空間との相性がとても良いのが特徴です。また、四角いテーブルに比べて「風景」を閉じ込める感覚が強く、レジン表現との親和性も高い形状です。

空間に海の記憶を残す一台です。
今回のように海をテーマにした場合、円という形は“入り江を俯瞰して見下ろす視点”を自然に作り出します。サイズが大きすぎないからこそ、細部の表現が近くで感じられ、砂の質感やグラデーションの変化をじっくり楽しめる一台になります。
カイヅカイブキ輪切り材を選んだ理由
年輪と地形が重なる、唯一無二の素材感
今回のレジンテーブルで使用している木材は、カイヅカイブキの輪切り材です。
輪切り材の最大の魅力は、年輪が同心円状ではなく、ゆるやかに揺らぎながら広がっている点にあります。この不規則な年輪の流れが、まるで航空写真で見た海岸線や地形図のように見える瞬間があります。特に今回使用している輪切り材は、自然にえぐれたような形状をしており、人工的に加工しなくても“入江”として成立する輪郭を持っていました。
レジンテーブル制作において、木材選びは完成度の8割を決めると言っても過言ではありません。カイヅカイブキ特有の柔らかな色味と、レジンの透明感が合わさることで、人工物でありながら自然の風景に近い表現が可能になります。
無理に削らず「木が決めた形」を尊重する理由
今回の制作では、輪切り材の外周を極力そのまま活かしています。
デザインを優先して無理に削り込むこともできますが、それをしてしまうと木が持っていた時間の痕跡が失われてしまいます。

エコロキアのレジンテーブル制作では、「木が決めた形を、人が少しだけ整える」という考え方を大切にしています。特に輪切り材は、成長の過程で受けた環境の影響がそのまま形に現れます。その偶然性を尊重することで、結果的に人工的には再現できない景色が生まれます。今回の入江の形も、こちらが設計したというより「木に教えてもらった」という感覚に近いものです。
本物の砂を使った砂浜表現へのこだわり
なぜ人工素材ではなく「本物の砂」を使うのか
レジンテーブルで砂浜を表現する場合、市販の着色パウダーや疑似素材を使う方法もあります。
しかし今回は、あえて本物の砂を使用しています。その理由は、粒の不揃いさと光の反射にあります。本物の砂は、粒径が完全には揃っておらず、細かいもの・粗いものが混ざっています。この不均一さが、レジン越しに見たときの自然な奥行きを生み出します。
人工素材では、どうしても均一すぎて「作られた感」が出てしまいます。ウェルネスサロンという空間で、自然を感じてもらうためには、視覚的なリアリティがとても重要です。
濡れた砂と乾いた砂を分けることで生まれるリアルさ
今回の砂浜表現で特にこだわったのが、「濡れた砂」と「乾いた砂」を分けて配置している点です。実際の海辺でも、波打ち際の砂は色が濃く、内陸側に行くにつれて明るくなります。

この違いを再現するため、砂の色味とレジンの含侵具合を調整し、境界が自然に見えるようにしています。このひと手間をかけることで、完成後にテーブルを覗き込んだとき、「水が引いた直後の砂浜」を連想させる表情が生まれます。細部ですが、この積み重ねが全体の完成度を大きく左右します。
海の深さを表現するレジンのグラデーション設計
いきなり明るいブルーを使わない理由
レジンテーブル制作でよく見かけるのが、最初から明るいブルーやターコイズを全面に流す方法です。視覚的には派手ですが、奥行きや深さの表現が弱くなりがちです。今回のテーブルでは、まず深いブルーグリーンを使い、沖合の“底”となる層を作っています。
この段階では、あえて少し暗く、重たい色味を選びます。海は浅瀬から沖に向かって徐々に色が変わるもので、いきなり鮮やかになることはありません。その自然な変化を再現するための下地作りが、この工程です。
層を分けて硬化させることで生まれる立体感
レジンは一度に流し込めば楽ですが、それでは平面的な仕上がりになります。今回は、色ごとに完全硬化を待ちながら工程を進めています。
深いブルーグリーンが硬化した後にマリンブルーのグラデーションを重ね、さらに波の表現を加え、最後にクリアレジンで全体を覆います。この「硬化→次工程」を繰り返すことで、層と層の間に微妙な境界が生まれ、見る角度によって表情が変わる立体的な海になります。時間はかかりますが、レジンテーブルを“作品”として仕上げるためには欠かせない工程です。
完成までに残された工程とお正月制作の覚悟
研磨工程が仕上がりを左右する理由
レジンテーブル制作において、研磨は最終的な印象を決める重要な工程です。
荒研磨で全体のレベルを揃え、そこから徐々に番手を上げていくことで、レジンの透明度と木の表情が引き出されます。特に今回のようにグラデーションや砂を封じ込めたテーブルでは、研磨のムラがあると奥行きが一気に失われてしまいます。
時間をかけて丁寧に研磨することで、まるで水面を覗き込んでいるような質感が生まれます。
オープンに間に合わせるための制作スケジュール
サロンのオープンは来年1月初旬。
そのため、このお正月休みはほぼ制作に充てる予定です。レジンは硬化時間が必要な素材のため、段取りを間違えると簡単に間に合わなくなります。逆に言えば、計画的に工程を組めば、年末年始という静かな時間は制作に集中できる貴重な期間でもあります。
一台のテーブルに向き合い続ける時間は、決して楽ではありませんが、その分、完成したときの達成感は大きなものになります。
ウェルネス空間におけるレジンテーブルの役割
家具が空間の記憶をつくるという考え方
ウェルネスビューティーサロンにおいて、家具は背景ではなく体験の一部です。
施術の前後、カウンセリングの合間にふと目に入るテーブルが、心を落ち着かせる存在であることはとても重要です。今回のレジンテーブルが、訪れる方にとって「このサロンといえば、あの海のテーブル」と記憶に残る存在になれば、それは空間づくりとして大成功だと思っています。
オーダーレジンテーブルだからこそできる表現
既製品では、ここまで空間に寄り添った表現は難しいものです。
オーダーレジンテーブルだからこそ、サイズ・色・素材・物語を一体として設計できます。今回のように、店名やコンセプトから発想し、木とレジンで風景を描く。そうした制作ができることこそ、エコロキアがレジンテーブル制作を続けている理由でもあります。
