ベース硬化“直前”に仕込む、今回の波表現の核心
なぜ「完全硬化前」に手を入れるのか
今回のレジンテーブルでは、これまでエコロキアで行ってきた波表現に、あえてひと手間を加えています。それが「ベースのレジンが完全に硬化する直前」に、波のラインとなる部分をわずかに凹ませる工程です。
通常、波表現は硬化したレジン表面にホワイト系のレジンや顔料を重ねて描く方法が一般的です。この方法でも十分に美しいのですが、どうしても「表面に描かれた波」という印象になりやすく、光の当たり方によっては平面的に見えることがあります。
そこで今回は、ベース層がまだ“完全には固まりきっていない”タイミングを狙い、波のライン部分だけを意図的に沈ませました。この工程により、後から加える白波が物理的な高低差を持つようになり、視覚的にも触覚的にも奥行きを感じる波表現が可能になります。
硬化タイミングを見極める難しさ
この工程で最も重要なのは、タイミングです。
早すぎればレジンが流れ戻ってしまい、遅すぎれば凹ませること自体ができません。
指で触れるとわずかに弾力が残り、しかし指跡が戻らない状態。
この“数時間ほどの短いタイミング”を逃さず作業する必要があります。
DIYや体験レベルではなかなか再現が難しい理由はここにあります。
温度、湿度、レジンの配合量、顔料の種類によって硬化スピードは変わるため、経験値がないと判断が非常に難しい工程です。
パールホワイトで描く「しぶき」が生む立体感
単なる白ではなく、パールを選んだ理由
凹ませた波のラインに重ねたのは、マットな白ではなくパールカラーのホワイトです。
この選択も、今回の仕上がりを大きく左右しています。
地中海の渚をイメージした今回のテーブルでは、強い日差しを受けた海面のきらめき、波が砕けた瞬間の微細な反射まで表現したいと考えていました。
そのため、光を受けたときにわずかに輝きを返すパール顔料を使用しています。

結果として、見る角度や照明の位置によって、波の表情が微妙に変化します。
これは写真では伝えきれない部分で、実物を前にしたときに初めて感じられる立体感です。
「描く」のではなく「乗せる」波表現
今回の白波は、筆で描くというよりも「乗せる」「散らす」という感覚に近い方法で仕上げています。凹みを作ったことで、パールホワイトが自然に溜まり、エッジ部分に厚みが出る構造になっています。
この厚みこそが、波が“立ち上がっている”ように見える理由です。
平滑な面に描かれた白波とは異なり、陰影が自然に生まれ、光の反射が複雑になります。
地中海をイメージした色設計と波の関係
沖の深さと渚の明るさをつなぐ役割としての波
今回のレジンテーブルでは、沖合の深いブルーグリーンから、浅瀬の明るいマリンブルーへと段階的なグラデーションを設計しています。
その中で、波は単なる装飾ではなく、色と色をつなぐ境界線としての役割も担っています。
波があることで、色の切り替わりが自然になり、「ここから浅瀬」「ここから渚」という視覚的な理解が生まれます。特に円形テーブルでは、この流れがぐるりと連続するため、俯瞰したときに“入り江を見下ろしている感覚”がより強調されます。
地中海の「穏やかさ」を意識した波の強さ
荒々しい波ではなく、あくまで地中海の渚をイメージしています。そのため、白波は強く立てすぎず、あくまで柔らかく、しかし確かに存在する程度に抑えています。
ウェルネスビューティーサロンという空間を考えたとき、主張しすぎる波は落ち着きを損なってしまいます。視線を奪いすぎず、しかし近づくと細部に気づく。
そのバランスを意識した波表現です。
この技法は誰に向いていて、誰には向かないか
向いているケース
- オーダーメイドで世界観を強く表現したい場合
- 店舗やサロンなど「空間の記憶」を作りたい場所
- 作品としての完成度を最優先したい場合
向かないケース
- 短納期・低コストを最優先したい場合
- 完全に均一でフラットな仕上がりを求める場合
- レジン作業に不慣れなDIY制作
今回の技法は、確実に仕上がりの質を引き上げますが、その分リスク管理と経験が必要になります。誰でも簡単におすすめできる方法ではありませんが、「ここぞ」という一台には大きな効果を発揮します。
完成に向けて残る工程と最終イメージ
研磨によって完成する「水面」
このあと控えているのは、研磨と最終仕上げです。
凹凸を活かしながら、表面としては一体感のある水面に仕上げていく工程になります。

番手を上げていく中で、パールの白波がどのように透け、どの角度で最も美しく見えるか。
その見極めが、最後の仕上がりを決定づけます。
空間に置かれたときに完成するレジンテーブル
このレジンテーブルは、工房で完成するわけではありません。
神戸・トアロードにオープンするウェルネスビューティーサロンの空間に置かれ、光が入り、人が行き交うことで初めて完成します。
訪れた方が、ふと視線を落としたときに、
「なんだか海を見ている気がする」
そう感じてもらえたら、このテーブルは役目を果たしたと言えると思っています。

