作品集サクラレジンテーブル

淡く、儚く、春を閉じ込める。山桜のレジンテーブルに“光のグラデーション”を仕込むという挑戦

作品集

クラフトマンシップは“ベタ”の中にこそ宿る

今回ご紹介するのは、エコロキアが手がける在庫作品のひとつ——山桜を使ったレジンテーブルの制作過程です。

在庫用ということもあり、シンプルで誰からも好まれる「桜色のレジンを流し込んだテーブル」を作る予定でした。けれど、そこに“ただの仕事”で終わらせないのがエコロキアのクラフトマンシップ。

どうせなら、ちょっと凝ったことをしてみたくなる」——その衝動が、今回のテーブルに“静かなひと工夫”を加えることになりました。

工程の工夫 – 傾けた型枠に、儚い桜色を注ぎ込む

目止めを終えた山桜材をしっかりと型枠に収めたあと、今回はあえて型枠を傾けてレジンを注ぎ込むという手法を取りました。

写真ではわかりづらいのですが、傾斜を付けた型枠に、淡く、ほのかに色づいた桜色のレジンを1/5ほど、そっと流し込む。レジンは傾きに沿ってゆるやかに広がり、木の凹凸に沿って静かに留まっていきます。

ここで注入を止め、硬化の時間をじっくりと待つ。この段階でのレジンは、あくまでも「土台」なのです。グラデーションの始まりを、木目の隙間に忍ばせるように。

色の“混ざり合い”ではなく、“重なり合い”を選ぶということ

グラデーションの作り方にはいくつか方法があります。一般的には、異なる色のレジンを同時に流し込み、自然な混ざり合いを活かすという手法が知られています。この手法は「にじむような美しさ」が魅力ですが、今回はそれとは少し違ったアプローチを選びました。私たちが目指したのは、“色のレイヤー”による静かなグラデーションです。

先に流し込んだ桜色のレジンが硬化した後、次回は反対側から淡い白色のレジンを重ねるように注入します。色と色が交わるのではなく、層として重なることによって生まれる、より繊細でコントロールされた透明感。

その結果、見る角度や光の当たり方によって、ほんのりと桜色が浮かび上がるかのような、儚いグラデーションが生まれるのです。

狙うのは“見えないかもしれない美しさ”

今回注いだ桜色のレジンは、できるだけ淡く、はかなげに、そして透明感を大切に調整しました。色というよりも、光と気配のような存在に近づけたいと思ったのです。次に流し込む白系のレジンもまた、濃く主張するものではなく、光を受けたときにふわりと浮かび上がるような、ミルキーホワイトのごく淡い色合いを予定しています。

二層のレジンが重なったとき、そこには「桜色が見えるようで、見えない」——そんな曖昧で、かつ魅惑的な美しさが生まれるはずです。

言葉にすれば「ほぼ無色透明」。しかし光を通したときにだけ感じる、その“かすかな色気”を、この作品には宿したいと考えています。

山桜という素材と、向き合うということ

今回使用しているのは、杢目の美しい国産の山桜材。その佇まいには、素朴で柔らかく、それでいて芯の通った力強さがあります。淡い色のレジンは、素材の木肌を邪魔せず、むしろ引き立ててくれます。木の“色”とレジンの“光”が出会うこの一点に、私たちは自然との対話を見出しています。

作品としての完成は、次回へと続く

今回の工程では、傾斜をつけた状態での桜色レジンの注入で終了。今はそのレイヤーがしっかりと硬化するのを待っている段階です。

次回はいよいよ、白系レジンの重ね注入。仕上がりとしては「一見すると普通のナチュラルなテーブル」、けれど角度や光で“ふと浮かぶ桜の気配”が、使い手にだけ見える。そんな密やかな贅沢を目指して、制作は続きます。

無垢とレジンの“あいだ”に宿るもの

エコロキアが大切にしているのは、「無垢材の魅力を最大限に活かしながらも、レジンでほんの少し遊ぶ」というバランスです。シンプルだけど飽きがこない。控えめだけど印象に残る。そんなテーブルを目指して、これからもひとつひとつ、丁寧に制作してまいります。

タイトルとURLをコピーしました